- 資金協力
マリンフード株式会社様からのご支援(2013年)
マリンフード株式会社様からご寄付を頂きました。そのご寄付の一部を活用させて頂き、ケニア共和国の首都ナイロビ市のイースリー地区にて、スポーツを通した若者の信頼醸成・交流促進事業を実施致しました。
マリンフード株式会社様からの温かいご支援に感謝を申し上げます。
本イベントを実施した背景
REALsは、2008年よりケニアの地域コミュニティでの治安改善・平和構築活動に取り組んでいます。今回のスポーツイベントを開催したイースリー地区は、ケニアの隣国ソマリアからの難民や、ケニア北東部からの国内避難民、また、ケニアで生まれ育ったソマリ系ケニア人などが多く、ソマリアの首都にちなんで「リトル・モガディシオ」と呼ばれることもある、ナイロビ市内でも独特な地域です。
また、当地区は、おおよそ4つの地域にわかれており、各地区は行政の管轄下にはあるものの、各地区間の信頼関係は築けておらず、地区間の分裂と対立が深刻な問題になっています。加えて、2013年9月に発生したテロ事件の余波もあり、隣接する他の地区のケニア人との関係も良好ではありません。
イースリーでは従来からソマリ系住民とケニア系住民との対立が原因でテロ・犯罪が発生していました。さらに近年は、高い失業率のために仕事の無い若年層が、テロリストなどの違法グループからリクルートされ、非行・犯罪行為に走るケースが増えており、早急な対策が必要である状況です。
そこで今回REALsでは、イースリー内の異なる地区に住む青少年グループを対象に、互いに友好を深め、日々の問題や紛争を解決するための対話を促し、地域での信頼醸成・交流促進を行うために、ケニアに拠点を持つソマリア系NGO、Somali Aidと協力して平和のためのスポーツイベントを開催する事にしました。
今回サッカーを種目として選択したのは、イースリー地区の青少年グループのリーダー達と協議した結果、同地区で最も人気のあるスポーツであり、地域全体から多くのチームが参加できるため、多様な青少年グループ間の信頼醸成・交流促進を実施する為に適していると考えられたためです。
イベントの目標
本スポーツイベントの目標は、イースリー地区の様々な青少年のグループが合同で一つのスポーツイベントに参加し、「スポーツ交流を通じてイースリー地区での平和的な共存を促進しよう ”Promoting peaceful co-existence in Eastleigh through sport”」というメッセージを共有することで、異なる青少年グループ間の交流を深め、皆で共通の目標に向けて協力する基盤をコミュニティ内に段階的に構築する事です。
イベントの成果
大きく南北に分かれるイースリー地区の各エリアから、計14チーム154名が参加し、サッカーの試合を行いました。なるべく多くの少年少女が参加できるよう、試合は男女別に17歳以下の部、13歳以下の部に分けて行いました。
また今回は正規の大会ではなく、平和的な交流や対話を促進することが目的のイベントのため、できるだけ多くのチームがプレーできるよう、一試合10分のミニゲームとしました。あいにくイベントの終盤に雨が降り始め、最後の2試合は雨の中のプレーとなりましたが、参加者は皆真剣にかつ楽しんでプレーしていました。
本イベントにはイースリー地域全体の交流促進のため、ケニア政府関係者ら、多くのゲストも参加しました。イースリー区内の行政部門リーダー、警察署幹部等が参加し、地域の交流促進を呼びかけるスピーチを行いました。さらにサッカー好きの若者たちにとって将来の目標や良いお手本となる、地元出身のプロサッカー選手3人(うち1人は元ケニア代表チームメンバー)も本イベントに参加してくれました。
失業率も高く、将来の見通しも立てられない若者にとって、地元出身のサッカー選手と間近で会えた経験は、大きな夢と希望を与えてくれる貴重な機会となったのではないでしょうか。
それ以外にも参加チームが属する地域の青少年グループのリーダーや、会場周辺の住民も加わり、合計では200人以上がスポーツ交流イベントに参加しました。当日は参加者・運営スタッフは全員「スポーツを通じてイースリー地区での平和的な共存を促進しよう ”Promoting peaceful co-existence in Eastleigh through sport”」というメッセージの入ったTシャツを着て、皆で同じ目的のために協力するという連帯感が高まりました。
試合終盤に雨が降り始めたものの、イベント自体は盛況のうちに無事終了し、参加者からは終了後に「楽しかった」「次はもっと長くプレーしたい」といった感想が多数寄せられました。
今後の活動
イースリー地区でこうした大規模な平和的交流イベントが行われることは稀であり、ケニア政府の関係者や地元社会に影響力を持つ長老らからも高い評価を頂きました。
彼らは、隣接するコミュニティとのトラブルに悩んだり貧困に苦しむ若者が過激な思想に染まってテロに走ったり犯罪に手を染めていく現状をたいへん憂慮しています。同じ地区内での若者グループ同士の対立も増えてきており、行き場のない不満や将来への不安を抱える若者、若者らを保護して指導する立場の長老、地域の治安を担当する警察・政府関係者らの協力体制をいかに構築するかが、大きな課題となっていると考えています。
若者たちが地域のイベントに参加して対話のきっかけをつかみ、長老や警察・政府関係者らと交流する機会を持てたことで、今後若者たちが急進化したり犯罪行為に走ることを予防するメカニズム構築が進むことが期待されます。具体的には、コミュニティ全体で犯罪や紛争の予兆を特定して情報共有することで未然に防ぐ、若者自身が紛争を解決するためのスキルを身に付けて日々の問題を自ら解決できるようになる、そうした成果につながるよう、引き続きイースリー地区で紛争予防の取り組みを進めていきたいと考えています。