トルコで続く物価高騰のなか、公的支援にアクセスできず困窮するシリア難民に情報提供・個別支援を強化・拡大へ
認定NPO法人REALs(Reach Alternatives)(東京都新宿区、理事長瀬谷ルミ子)は、2022年10月14日より、トルコ・メルスィン県で暮らすシリア難民への情報提供・個別支援を強化・拡大し実施いたします。
避難生活が長期化するなか、言葉の壁や申請に関する情報の不足などで公的な支援制度を利用できず、困窮したまま取り残されているシリア難民がいます。トルコで続く物価高騰は、そうしたシリア難民の生活を直撃しています。経済状況が悪化するなかで児童婚などのジェンダーに根差した暴力も深刻化しています。
本事業でREALsは、6,300人のシリア難民と面談(対面/電話)を行い、必要とされる情報や個別支援の提供によって公的支援へのアクセスをサポートしていきます。またジェンダーに根差した暴力について、トレーナーの育成や予防啓発セッションの提供、リーフレットの配布などにより、知識の普及と予防・対応のしくみづくりを行います。
シリア難民が本来得られる公的支援にアクセスし、ジェンダーに根差した暴力の危険にさらされずにトルコでの生活を安定させていけるよう、支援を行っていきます。
トルコで続く物価高騰の背景と生活への打撃
2021年末のトルコリラの暴落、また2022年2月のウクライナ危機の勃発により、トルコでは物価の高騰が続いています。
物価の高騰により、元々困窮していたシリア難民の生活がさらに苦しくなっています。経済的困窮や失業などのストレスが、鬱などの精神疾患や家庭内不和・家庭内暴力などの問題を生み出しています。また児童婚や児童労働の増加も報告されています。
シリア難民は申請によりトルコで公的支援を受けることができますが、言葉の壁や申請に関する情報の不足などにより、制度を利用できていないシリア難民が多くいます。そうしたシリア難民が困窮を抜け出し、トルコでの生活を立て直していくためには、申請のネックとなっている課題をともに解決し、適切な申請を行えるようサポートしていく必要があります。
公的支援へのアクセス以外にも、「トルコ語がわからないので、病院に行けない」「雇用について疑問があるが、トルコの法律がわからない」など、シリア難民がトルコでの生活で直面する課題は多岐に渡ります。個別支援により、一人ひとりの状況に沿ったサポートの提供が求められています。
相談窓口を訪れたシリア難民への心理カウンセリングの様子
事業地となるメルスィン県の状況
本事業を行うメルスィン県には、2022年8月時点で約24万4000人のシリア難民が登録されています。人口10人あたり1.1人がシリア難民であり、難民の対人口比はトルコ国内で4番目*です。一方、同県で活動する支援団体の数は非常に少なく、1施設あたり1,921人の難民に対応しています。多くのシリア難民が居住する他県に比べても、圧倒的に支援の手が不足しています。
*人口10万人以上の都市のうち
REALsのシリア難民支援とは
2022年10月から、REALsは以下の支援を行っていきます。
個別支援
- ・難民6,300人への相談対応(対面/電話)
- ⊳必要とされる情報提供を行うとともに、一人ひとりの状況を確認し、必要に応じて個別支援につなげます
- ・心理カウンセリングの提供
- ・トルコ語通訳支援の提供(行政機関や病院・学校等での手続き)
- ・法律個別相談の提供
- ・小規模な権利・法律セミナーの実施
- ⊳セミナーのテーマは、相談窓口やSNSなどを通じて定期的に難民の要望を汲み取り決定します。「シリア難民に係るトルコの法律」、「労働・雇用に係る情報」、「トルコ国内外の移動」などを想定。
法律と権利に関するセミナーの様子
ジェンダーに根差した暴力に関する支援
- ・トレーナー研修を実施
- ⊳現地でジェンダーに根差した暴力について人材育成を行えるトレーナーを育成
- ⊳現地で人材育成を行えるようにすることで、ジェンダーに根差した暴力の事例や予兆に確実かつ迅速に対応できるような体制の確立を目指します
- ・リーフレットを配布し情報を広げる
- ⊳ジェンダーに根差した暴力について、また性的搾取・虐待・ハラスメントからの保護についてのリーフレットを制作し、各600部の配布を行います
- ⊳リーフレットを通じて、ジェンダーに根差した暴力についての理解を深め、難民自身がジェンダーに根差した暴力の早期発見・予防ができる環境づくりを目標とします。
- ・難民140人へのジェンダーに根差した暴力の予防啓発セッションを実施
- ⊳セッションは心理カウンセラーのもと実施します
REALsは2016年からトルコ・メルスィン県のシリア難民への支援を行っています。これまで支援活動を行ってきた5地区に加え、本事業では新たにタルスス地区での活動を開始します。
タルスス地区
タルスス地区は県内最多の約35万人の人口を有し、約4万6千人のシリア難民が居住しています。農業が盛んな同地区では、シリア難民の多くが非正規または短期雇用の季節労働に従事しており、収入は非常に不安定です。無償で借りた土地にテントを張って生活する非公式の難民キャンプが多く作られています。新型コロナウイルス感染症の拡大以降、キャンプの住民を中心として経済的理由による児童婚や児童労働が拡大しています。
同地区でシリア難民への支援活動を行っているのは行政・政府機関を除くと1団体のみであり、同地区に住む難民の多くが支援の手から取り残されています。
シリア難民が本来得られる公的支援にアクセスし、ジェンダーに根差した暴力の危険にさらされずにトルコでの生活を安定させていけるよう、支援を行っていきます。
今回の事業は、皆さまからのご寄付とジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成により行われます。
認定NPO法人REALs (Reach Alternatives)
REALsは争い予防に取り組む認定NPO法人です。現在の活動地は、アフガニスタン、シリア、トルコ、南スーダン、ソマリア、ケニアです。REALsは紛争やテロなどの争いを防ぎ、人と人が共存できる社会の実現を目指しています。争いの当事者となった人たちが、主体的に問題の予防や解決に取り組んでいけるように、REALsは現地での人材育成や争い予防のしくみづくり、社会のネットワーク構築などを行っています。