内戦が続くシリアで、過酷な経験の衝撃を生き抜く心のケアを

認定NPO法人REALs(リアルズ:旧日本紛争予防センター)は争いを予防し、人と人が共存できる社会をつくる国際NGO。ご寄付は寄付金控除の対象になります。

REALsからのお知らせ

内戦が続くシリアで、過酷な経験の衝撃を生き抜く心のケアを

 認定NPO法人REALsReach Alternatives)(東京都新宿区、理事長瀬谷ルミ子、以下REALs)はシリア北西部で、心のケアとジェンダーに根差した暴力を予防する事業に取り組みます。


 シリアでは長引く内戦や20232月に発生したトルコ・シリア大地震、また市場価格の高騰によるさらなる困窮などにより、多くの人が不安やストレスを抱え、トラウマに苛まれる人も多くいます。そうしたなかで家族のなかの立場が弱い人に対する家庭内暴力や、生計手段としての児童婚などのジェンダーに根差した暴力が深刻化しています。


 心のケアを必要とする人が支援を受けられるように、REALsはシリアで住民を訪問し相談を聞く人材の育成、カウンセリング、絵や写真を用いてトラウマに向き合うワークショップ、ジェンダーに根差した暴力の予防啓発セッションを実施します。


 REALs2021年から現地団体と提携し、その団体の心のケアやジェンダーに関する能力強化を行いながら、シリアでの支援活動に取り組んできました。これまでは国内避難民キャンプのみでの活動でしたが、今回からはキャンプの外、市街地にも活動を展開します。

紛争、大地震、避難生活のなかでの困窮…
過酷な経験から衝撃を受ける人たちに対する圧倒的な支援の不足

 2011年から続く内戦の影響により、シリア北西部では人口の70%にあたる290万人が国内避難民として暮らしています。※1 その多くが紛争により元々住んでいた場所を離れたあと、避難先でも爆撃や銃撃の危険にさらされて再度避難を強いられる経験をしています。さらに、20232月にはトルコ・シリア大地震が発生。シリアだけでも約1万人が死傷するなか、新たに10万人が暮らしていた場所を離れて避難を余儀なくされました。※2

 

 そうした衝撃的な経験のなか、20235月にシリアで行われた調査では、調査対象者の44%に深刻な精神障害、27%に深刻な精神障害とPTSDの症状、36.9%PTSDの症状が確認されました。うち86.6%がこれらの症状の原因を「紛争」と回答しています。※3 一方、REALs2022年に77カ所の国内避難民キャンプで調査したところ、心のケアに関する支援が行われていたキャンプは36%であり、膨大な数の人たちが深刻な心の傷を抱えている状況に対して、圧倒的に支援が不足していることが分かっています。

 

 そうしたなかで家族のなかの立場が弱い人に対する家庭内暴力や、生計手段としての児童婚などのジェンダーに根差した暴力の深刻化、市場価格の高騰による生活状況のさらなる困窮などが、人々の苦境に追い打ちをかけています。

 

※1 OCHA(国際連合人道問題調整事務所)、2023年12月

※2 OCHA(国際連合人道問題調整事務所)、2023年9月

※3 MedGlobal、2023年5月


REALの心のケアとジェンダーに根差した暴力予防の活動

 上記の状況を受け、REALsはシリア北西部で以下4つの活動を実施します。

 

  1. 「心のケアを必要とする人が相談できる相手」を育成し、必要に応じた支援につなげる

・国内避難民46人をコミュニティワーカーに育成します。

・コミュニティワーカーは自らが暮らす国内避難民キャンプで住民を訪問するアウトリーチを行います。

・アウトリーチにより支援が必要だと分かった人について心のケアなどの支援につなげます。

※キャンプ外の市街地での活動については、同様にコミュニティワーカー研修を修了した現地団体スタッフが行います。

 

  1. カウンセリングを提供する

・心のケアを必要とする468人に心理カウンセリングを提供します。

・国内避難民キャンプ、もしくはその周辺の市街地で暮らす人を対象として、コミュニティワーカーのアウトリーチの結果、もしくは他の支援団体からの連絡に基づいて実施します。

 

  1. 絵や写真を用いてトラウマに向き合うワークショップ

・ストレスレベルの高い人192人に、周りの人と協力してトラウマに向き合うためのワークショップを提供します。

・ワークショップでは参加者一人ひとりが写真や絵画、針金、粘土などの表現方法を用いて、同じようにトラウマを抱える他の参加者に自分の受けたトラウマやそれによって生じたストレスについて、無理のないかたちで自分らしいトラウマの物語をつくり、語ります。大きな衝撃を被った経験を他の人に話すなかで、自分の経験と感情を言葉に紐づけて向き合うことを目指します。

 

  1. ジェンダーに根差した暴力の予防啓発セッション

・国内避難民キャンプ、もしくはその周辺の市街地で暮らす416人にセッションを提供します。

・セッションではジェンダーに根差した暴力についての知識や予防方法を伝えます。

 
***

 REALs2021年から現地団体と提携し、その団体の心のケアやジェンダーに関する能力強化を行いながら、シリアでの支援活動に取り組んできました。今回も同団体と提携し、同団体がコミュニティワーカーを育成する能力を高めるため、同団体でトレーナーを務める人たちを対象としたフォローアップトレーニングの実施を予定しています。また、これまでは国内避難民キャンプのみでの活動でしたが、今回の事業からはキャンプの外、市街地にも活動を展開します。

 

 本事業はジャパン・プラットフォームの助成とREALsへのご寄付により実施いたします。


認定NPO法人REALs (Reach Alternatives)

 REALsは争い予防に取り組む認定NPO法人です。現在は、アフガニスタン、シリア、トルコ、南スーダン、ソマリア、ケニアで活動しています。

 REALsは紛争やテロなどの争いを防ぎ、人と人が共存できる社会の実現を目指しています。

争いの当事者となった人たちが、主体的に問題の予防や解決に取り組んでいけるように、REALsは現地での人材育成や争い予防のしくみづくり、社会のネットワーク構築などを行っています。

(ウェブサイト:https://reals.org

 

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