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シリア難民支援:シリア危機から10年。いま必要な支援を届ける
2011年に勃発したシリア危機から、3月で10年が経ちます。REALsは2015年からトルコ国内でシリア難民支援を開始し、2016年からは南部メルスィン県で活動を続けています。
避難生活の長期化によって一人ひとりの暮らしや状況に違いが生まれ、必要な支援がそれぞれに異なるようになった現在、REALsはメルスィン県で、現地提携団体を通じてシリア難民一人ひとりの異なる問題に対応するための支援を行っています。
限られる支援団体
メルスィン県には約21万人のシリア難民が暮らしており、その人数は県人口の約12%と全国5位の水準となっています(※1)。一方、メルスィン県のエルデムリ地区で支援活動を行う団体はとても限られていて、REALsと現地提携団体だけが同地区で暮らす難民の方々に支援を提供しています。
一人ひとりの状況に応じた支援
REALsはこのエルデムリ地区とメルスィン市内4地区のシリア難民を対象にした、生活についての相談窓口を設けています。窓口では現地提携団体のシリア人スタッフやボランティアが、対面や電話、オンラインを通じて、シリア難民の相談に個別に対応しています。
寄せられる相談は、トルコ政府による支援制度を利用するための手続きや、引っ越し、結婚、出産などに関わる法的な相談、また精神的な不安や家庭内暴力の問題、子どもの就学や健康に関する問題など様々です。相談の内容に応じて、心理社会カウンセラーや弁護士による専門的な個別対応も提供しています。
(※1)トルコ内務省、2021年3月3日
新型コロナウイルス感染予防のため、電話やオンラインでの対応を強化しています
相談内容に応じて、心理社会カウンセラーによる心のケアも提供しています
REALsがどのような支援を行っているか、より多くのシリア難民の方々に情報が届くように、昨年10月からは更に情報発信に力を入れています。Facebookでの頻繁な発信や、シリア難民がよく利用する店舗への支援内容を紹介するリーフレットの設置も始めました。
REALsの提供する支援内容を紹介したリーフレット。シリア人の母語であるアラビア語とトルコ語を併記しています
トルコ政府による新型コロナウイルス拡大予防対策のための外出規制が発令される中、対面だけでなくオンラインや電話での相談対応も行い、2021年1月~2月の間に約270世帯(約1,540人)から相談を受け支援を提供することができました。
REALsは現地の提携団体に相談への応対の仕方や専門知識を身に着けてもらうための研修に力を入れて実施しています。右端はREALs職員
いずれREALsが支援を終了した後も現地の人たちが自立して、構築した仕組みや取り組みを持続できるようになることを大切にしています
「見捨てずに息子にカウンセリングを続けてくれたことを感謝しています」
ラーマさんは7年前夫と2人の子どもと一緒に、シリアからリビアのトリポリに逃れ、そこから船で地中海を渡りメルスィンに逃れてきました。
ターリク君はシリアを逃れてからもずっと、爆撃や空爆のヘリコプター、迫撃砲などの音が頭から離れませんでした。8歳になり学校に通うようになると、その苦しさが自分でもどうにもできないまま、ほかの子どもたちへの暴言やいじわるというかたちで表れてしまいました。
先生から行動を改めるまで学校に来てはいけないと言われてしまった時期に、新型コロナウイルスの影響で外出制限が発令されターリク君は家にひきこもり、さらに不安定になって両親の言うことも聞かなくなっていきました。
ラーマさんは心のケアが必要だとターリク君をいくつもの支援団体などに連れて行きましたが、どこにいっても状況が変わらず途方に暮れていました。
そんなとき、ラーマさんはREALsの支援のことをインターネットで知りました。カウンセリングや、同じ思いを抱えている子どもたち同士で気持ちを話すことなどを通じて状態は改善し、今ではカウンセリングを続けながらもまた学校に通うことができるようになりました。
「息子が精神的な問題を乗り越えることができるまで、見捨てずにカウンセリングを続けてくれたことに感謝しています。これからも、心も健康に家族みんなでこの地で暮らしていけるよう、カウンセリングや相談を活用していきたいです」とラーマさんは話してくれました。
REALsはこれからも、一人でも多くの難民の方々が支援を得ることができ、トルコで少しでも安心して生活していけるよう活動に取り組んでいきます。
引き続きご支援をいただきますようお願いします。
※この活動は、皆様のご寄付を活用するとともにジャパン・プラットフォームの助成を受けて実施しています。