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シリア|多様性の中で育まれる平和への歩み
先日、REALsのシリア事業担当職員・工藤がシリア越境支援の拠点であるトルコ、ガジアンテップへ出張し、シリアの現地の市民団体がどのような平和構築活動を行っているかの実態調査を実施しました。複雑な情勢が続く中で、草の根レベルの取り組み内容を把握するとともに、 今後の支援の可能性や連携方法、実施体制の検討、さらには現地情勢や当局との調整状況についても確認しました。
シリアの状況に ついて
シリアでは14年以上続く内戦の影響で、今も治安は不安定です。南部のスワイダ県では、政府軍・地元のドゥルーズ武装勢力・遊牧民武装勢力が衝突し、多くの死傷者と避難民が出ました。首都ダマスカスでは経済悪化による犯罪の増加、北東部では過去に勢力を持ったイスラム国(IS)残党の活動が再び見られています。各地での衝突や攻撃により、民間人や支援活動がたびたび被害を受けています。
REALsの活動地であるイドリブ県は、以前に比べて一定の安定が見られるものの、元アサド政権の残党や政府軍、一部ではISとの衝突も続き、人々は依然として爆発や銃撃などの危険に直面しています。長年にわたりアサド政権やロシア軍による激しい空爆を受けてきた地域であるため、生活に必要なインフラの多くが破壊されたままであり、帰還や再定住を妨げる大きな要因となっています。その結果、人々は依然として厳しい環境での生活を余儀なくされています。
また、難民や国内避難民の帰還が進む中で、イドリブ県はクルド系、アラブ系、アルメニア系など多様な民族や宗教的背景を持つ人々が暮らす地域となっていますが、その共存には多くの課題があります。土地や住宅の所有をめぐるHLP(住居・土地・財産)問題、紛争中に移り住んだ人々と元の住民との対立、さらには過去に特定の宗教集団が攻撃を受けた経験から「帰還すれば再び被害を受けるのではないか」という恐怖心などが重なり、帰還が進まないケースも見られます。民族や宗教だけでなく、人々の立場や経験の違いが複雑に絡み合い、信頼関係の構築を難しくしているのが現状です。
現地で芽吹く草の根の平和構築活動
この困難な状況下でも、現地市民団体による地道な平和構築活動が各地で展開されています。私たちが今回の調査で確認できた活動の一例をご紹介します。
1.環境改善を通じた共同体づくり
地域住民による共同ゴミ拾い活動
街灯設置プロジェクト(夜間の安全確保)
定期的な市民会合・意見交換会の開催
2.相互理解促進の取り組み
多様な背景を持つ住民の共存を目指し、民族や宗教の違いを越えた相互理解を深める活動が行われています。参加者はそれぞれの経験や価値観を活かしながら、共に暮らすための道を模索しています。
中には、ある特定の宗派への攻撃が激化した影響で、故郷への帰還に恐怖心を持っている方々もいます。そのような地域で、多様な民族で構成された市民団体が、不安を抱えたまま生活をしている家庭に花束を持って訪問し、「共に理解を深め、共存していきましょう」というメッセージを伝える草の根の取り組みが行われています。
今後の展開に向けて
花束を持った訪問活動を展開するイドリブ県内の団体は、今回新たにREALsと連携関係を構築することができました。この団体には、今後この活動や争い予防、平和構築活動を広め、つないでいくトレーナー としての役割を担っていただくことも検討中です。現地のニーズに根ざした具体的な事業展開を通じて、持続可能な平和構築支援を実現していきたいと考えています。
困難な状況にありながらも、希望を捨てずに平和への歩みを続ける現地の皆さんの姿に、私たちも大きな学びと励ましをいただきました。引き続き皆様のご関心・ご支援をお願いいたします。
※本報告は現地の安全上の配慮から、一部詳細を省略しております。
