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イベントレポート|シリア平和構築オンライン対談|瀬谷ルミ子×現地市民団体が語る希望と課題
6月11日開催|瀬谷ルミ子×現地市民団体がシリア平和構築を語るオンライン対談|クラウドファンディングイベントレポート

シリアの「リアルな現状」と「目指す未来」とは。その未来の実現のため、必要な取り組みとは。
※注釈がない限り、現地市民団体の声を中心に記載しております。
1.現在のシリアの状況は?人々の声から見える希望と課題は? ・アサド政権崩壊直後にシリア北西部イドリブに向かおうと乗ったタクシーの運転手は嬉しそうに言った。 「地面を見てください、笑っているでしょう!大地でさえ前政権から解放されてとても喜んでいるんです!」 ・シリアの人々は100年以上、安全で安定した生活を経験していません。第一次大戦後はフランス・イギリスの植民地支配、その後はイスラエル建国に伴う数度の戦争、そして現在まで続いていた内戦。長期にわたる不安定な状況が続いていました。 ・14年間故郷を離れることを余儀なくされた人々が、ついに家に戻れるようになりました。難民や避難民たちは「数ヶ月前まで夢にも思わなかった故郷への帰還を真剣に検討し始めている」と語り、砲撃で破壊された自宅の修復作業を開始しています。 ・虐殺で夫と4人の子どもを失った女性は「正義が実現されず、加害者が処罰されないのではないか」と懸念を表明。元拘束者の母親は「これほどの破壊と不正義の後、どうやって共存できるのか。過去の傷に向き合う和解プロセスが必要だが、重大犯罪への処罰は不可欠。犠牲者、拘束された人、行方不明者を忘れることはできない」と訴えています。 ・大学卒業者の青年は就職先が見つからない現状を嘆き、「国民は飢えと貧困に疲れ果てている。電気や水道も止まっている。生活水準の即座な改善が急務」と述べています。 ・多くの住民が治安確保への懸念を表明。「前政権崩壊の喜びは大きいが、混乱が派閥間の新たな内戦に発展したり、旧政権の残党が報復を企てたり、武装勢力IS(イスラム国)が存在することを心配している。すべての人を守る真の安全としっかりしたしくみが必要」との声が上がっています。 2.シリアで今どのような分断が生じている? ・アサド政権崩壊から6か月。昔話のように「めでたしめでたし」で済まないほど、14年にわたる内戦と独裁政権による傷と分断は根深い。 ・主な分断としては、宗派や民族、男女間の機会や権利の不均衡があるが、その他の主要な分断として以下が存在しており今後さらに課題となる恐れがある。 1)南部と北部:前政権から爆撃と犠牲を受け続けながら抵抗を続けた北部地域と、前政権の支配下で厳しい監視や強制収容所などの被害を受けてきた南部地域。それぞれの苦しみがありながら、北部地域は「北部が被害を受けて抵抗と人道支援をする間、南部は政権にもっと反対できたのでは。協力者がまだいるのでは」との想いがある一方、南部地域は「南部は独裁政権下で耐え抜いた。北部の方が独自の取り組みや人道支援などの経験があるからと南部に指示をしないでほしい」という水面下での対立感情がある。 2)避難民・帰還民と故郷にとどまった人々:14年ぶりに故郷に帰還した避難民たちは、家や道路、水設備などが破壊されがれきが山積み状態の街に愕然とする。故郷に留まり続けた住民たちですら厳しい生活環境のなか、帰還した人々との間で限られた土地や資源を巡る緊張感が高まっている。 3)欧米式の「人権」や「平和」への不信感: 外国の政治や軍事介入に長年ふり回され、欧米諸国が人権や平和の名のもとに行ってきた施策に不信感を持ってきた記憶がぬぐえず、これから真の意味で必要な分断の解決や共存のための取りくみに人々が不信感を持ってしまう状況がある。 自分たちの文化や価値観を否定し、外部が正しいと思う意見の押し付けをされることへの警戒感がある。 3.分断や対立を解決する突破口は? ・ルバーバ事務局長:これらの問題を解決するため、平和づくりの取り組みを水道などの生活に必要なサービスと組み合わせることで信頼を高められます。目に見える具体的なサービスを提供することで信頼関係が生まれ、話し合いや平和づくりに必要な信用が得られます。 若者や女性が中心となった調停委員会を作ることも効果的な一歩となるでしょう。対立する問題について直接話し合うのではなく、まず「共通の課題」や「みんなの利益」について話し合うことで少しずつ信頼を築き、その後でより難しい問題に取り組むことが大切です。 そのうえで、リアルズと今シリア北西部で栗田工業株式会社の支援で進めているような水供給設備の支援は非常に適したものだと思う。 ・瀬谷理事長:シリアでは平和構築という言葉に不信感があるという話があったが、他の紛争地でも「平和」という言葉が特に被害者に対して和解や許しの押し付けに思われる場合がある。 REALsは最初から「平和のため」とは言わず、対立・分断している相手と話もしたくない人をどう巻き込むか、気が付いたら協働したり協力する仕組みをつくるようにしている。集団関わらず喫緊の課題である食料や水衛生などを入り口に、平和や共存の取り組みにつなげる突破口とするアプローチが有効だと感じている。 4.日本やREALsのような日本の団体がシリアの平和に関わる意義は? ・日本はシリア含めた中東地域の紛争において非干渉的で中立的な立場として認識されています。この地域での植民地支配の歴史がなく、シリア紛争での軍事や政治的な介入にも直接関わっていません。 そのため、利益を求めていると思われる国の組織と比べて、様々なシリアのコミュニティからより大きな信頼を得ることができます。 ・さらに、REALsが実践している草の根から積み上げる「ボトムアップ」のアプローチは、今のシリアでまさに必要とされているものです。現場での経験を政策レベルの話し合いにつなげることで、一般のシリア人の声と実体験が政策や和平に反映され、影響を与えることができます。 これは、ハイレベルな会談でよく見られる現実との食い違いを解決するのに役立ちます。現場での実際の活動を通じて信頼を築くことで、地域の関係者が自分たちの考えを効果的に伝えられるようになるのです。
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5.現地市民団体ルバーバ事務局長からのメッセージ 「まず初めに、REALs、そして日本の皆さまからのご支援とご協力に、心より感謝申し上げます。どんなに小さな努力や寄付であっても、私たちにとっては非常に大きな価値があります。私たちは、日本がシリアの復興に参加し、重要な役割を果たしてくださることを心より願っています。日本の企業は技術、産業、経営において世界的に卓越しており、その専門性と革新性がシリアの発展に貢献する日を楽しみにしています。 また、日本の皆さまがシリアや中東全体における正義のための活動を今後も支えてくださることを願っています。こうした支援は私たちに希望を与えてくれます。正義には仲間がいるという希望、そして真実が最終的には勝るという希望です。 最後に、私たちは心から日本の皆さまをシリアにお招きしたいと思います。シリアは多様な地形に恵まれた美しい国です。私たちシリア人は、お客様を大切にし、もてなしの心を誇りとしています。皆さまをいつでもあたたかくお迎えいたします。」 |
シリアの人々が、この歴史的な転換期において、平和と希望の担い手として立ち上がろうとしています。
しかし、その道のりは決して平坦ではありません。一人ひとりの力は小さくても、それが集まることで大きな変化を生み出すことができます。REALsは、シリアの人々とともに、平和へと続く未来をつくるために、活動を続けています。