民族融和度の調査分析

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活動レポート

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民族融和度の調査分析

REALsでは、多民族の平和的共存と関係改善のレベルを定量化して測るために、「民族融和度(さまざまな民族が暮らす地域で、対立しあう関係から、争わず共存していけるようになった度合いの変化をはかる指標)の調査分析」を行っています。具体的には、民族融和を以下の3つの要素に分類します。 
 
A)コミュニティの平和的紛争解決のキャパシティ  
B)社会的一体性 
C)紛争・緊張関係の緩和 
 
そのうえで、各要素の変化の測定に必要かつ入手可能な指標を測定します。例えば、「(A)コミュニティの平和的紛争解決のキャパシティ」では、紛争管理研修を受けたユース・リーダー等が実際にコミュニティ内で起こった紛争を解決した数などを指標としています。また、「(B)社会的一体性」では、異なる民族間の交流や意識の変化を測定します。具体的には、住民間で物の貸し借りをするようになったかなどを指標として設定しています。 
 

これらの指標について住民への聞き取り調査を行ってデータを収集し、その変化を見ることで民族融和度を測っています。 

平和的共存の取り組みの効果を測定した結果は、事業の質の評価とさらなる改善に活用しています。事業開始前に比べ、終了後現地の争いの状況や民族間の関係が全体的に改善していました。しかし逆に成果が上がっていない部分は、その理由を分析し、事業の改善に役立てています 

調査結果

民族融和度調査結果は、3年間にわたり4回に分けて行われた事業の終了ごとに、詳細な報告書にまとめています。ここではその一部を紹介いたします。 

2016年から2019年までに行われた事業について、事業開始(青色のグラフ)と事業終了後(赤グラフ)の変化を測定した結果が以下です。

 

(A)コミュニティの平和的紛争解決のキャパシティ  

コミュニティのキャパシティは、3地区とも順調に向上しました。特に、紛争解決率の向上が目覚ましく、事業開始時は半分程度の解決率であったのが、事業終了時には、70%から100%程度の解決率にまで向上しています。 

紛争解決率ののびが最もよかったウェイステーション地区では、指導者からユース・リーダーへのメンタリング(悩みの相談やアドバイス)が最も活発に行われていました。その影響もあってか、ユースリーダーたちも最も積極的に地域での啓発活動に参加していたと報告がありました。3地区とも、事業開始時は指導者の行う啓発を聞いているだけだったユース・リーダーが、事業終了時には自分たちで啓発の内容を考えて実施し、コミュニティの人々に向けて積極的に紛争予防の大切さを呼び掛けるまでになりました。 

ユース・リーダー一人一人の心の変化も大きく、グンボ地区でギャンググループに所属していた若者は、紛争管理研修でファシリテーターの根気強い説明を受け、徐々に紛争の予防・解決の知識・技術を得て、研修の中でリーダーシップをとるまで成長しました。 

若者のリーダーを育てたことにより、事業地に恒久的な平和が根付くことが期待されます。 

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(B)社会的一体性

社会的一体性は、大きく分けて①意識の変化、②行動の変化の項目に分けられます。 

意識の変化は、互いに助け合ったり、紛争を解決したりすることをどれだけ重要だと思うかを測りました。行動の変化民族間での挨拶や物の貸し借り等の頻度が事業実施前後でどのように変わったのかを調査しました。 

3事業地ともに、意識・行動の変化がみられましたが、一部下がった指標もありました。ウェイステーション地区のB1意識の変化は、事業開始はレベル9(最高レベルは10)でしたが、事業終了後はレベル7という調査結果になりました。他の指標や現場の声から考えると、この指標の減少が必ずしも社会的一体性の低下を意味するものではなく、指標の設定の仕方に問題があった可能性があります。例えば、「民族融和度が高まると平和について話す機会が多くなる」という想定のもと調査を行いましたが、実際は、治安が悪くなると平和について話すことが多くなり、反対に平和的な状況下では平和について話す機会が少なくなるということが分かりました。民族融和度の測定は、新たな試みであるため、この改善点を今後の調査指標設定に活かしていきます。 

 

(C)紛争・緊張関係

治安を理由にコミュニティから抜けてしまった世帯数は、2016年12月事業開始から2017年8月事業終了後までに大きく減少し、その後は2019年8月の事業終了まで低い水準を維持しています。ジュバ市内でも特に多様な民族、国籍を持つ人が入り混じって生活しているウェイステーション地区では、スーダンからの帰還民が多いため、事業開始前は“スーダン出身という連帯感がありましたが、それ以外の人々との関係性は薄く挨拶などもしていませんでした。しかし、REALsの事業実施後は、南スーダン人、スーダン人という枠組みを作るのではなくウェイ・ステーションのコミュニティ全体でつながりを持とうという考え方や行動の変化がありました。このような様々な変化の積み重ねが、この民族融和度にも表れていると考えられます。

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