- 争い予防
- 南スーダン
現地の農家が自らの手でサバクトビバッタの食料被害を防げるように(南スーダン)
REALsは2020年5月~2021年1月と2021年4月~12月(1年5カ月)、南スーダン共和国中央エクアトリア州ジュバ市郊外の農村にて、サバクトビバッタ対策事業を実施しました。南スーダンでは2011年のスーダンからの独立後も武力闘争や繰り返す災害などによる混乱が続いており、2020年現在では人口の約7割にあたる830万人が人道支援を必要としていると言われています。
そのなかでサバクトビバッタの大量発生は、深刻な食料危機だけではなく、食料資源を巡る争いの激化をもたらす可能性がありました。
そこでREALsは、現地の農家が自分たちの手でサバクトビバッタの発生に気付き・対処できることで、サバクトビバッタの大量発生から起こりうる食料危機、そして争いの激化を予防するために、以下の支援を行いました。
- 1. 現地で身近な材料で作れるバッタ忌避剤の改良、作り方・散布方法を普及:
- 研修、リーフレットの配布
- 2. バッタ発生を「早期発見・早期対応」するための、地域のネットワークづくり/このネットワーク
- は、現地の農家と遊牧民の間の争い予防にも活用
- 3. いざバッタ被害が出たときも持ちこたえられるよう農家の生産性を上げるため、農業技術向上研修と
- 種苗や農具の配布
サバクトビバッタは東アフリカ及び南西アジア諸国に生息し、大量発生すると農作物に甚大な被害をもたらします。大量発生したサバクトビバッタの群れは1日に100km以上の距離を移動し、通り過ぎた土地の農作物や牧草地の植物を食べ尽くし、卵を産み付けます。深刻な食糧危機を未然に防ぐため、各国政府や国際機関などにより、さまざまな対策が取られています。
2019年12月以降、南スーダンが属する東アフリカ地域では諸々の環境条件が重なり、ケニア、ソマリア、エチオピアにおいて過去数十年間で最も深刻なサバクトビバッタの被害が確認されています。
害虫駆除といえば、「殺虫剤」が真っ先に思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。実際に、視界に収まらないほど大量に発生したバッタを迅速に駆除し、被害を最小限に食い止めるために、従来のバッタ対策では「殺虫剤」として化学農薬の広範な散布が行われ、効果を上げてきました。しかし、健康被害や環境への影響の懸念から、現在は化学農薬に代わる殺虫剤の使用をはじめとした代替案が模索されています。
また経済的に厳しい生活を送る人が多い南スーダンでは、農民がバッタ発生の予兆に気付いても殺虫剤を買う経済的余裕がなかったり、そもそも殺虫剤の入手自体が困難だったり、また関係各所へ対応を依頼しても対応が取られないという課題がありました。
REALsはこれまでにサバクトビバッタが飛来し卵を産み落としたことが確認された南スーダンの農村で、現地の人たちがサバクトビバッタの大量発生を予防し、また発生した場合でも被害を最小限で食い止められることで、食料危機から発展しうる争いを防げるように、以下の支援を行いました。
この事業では2020年5月~2021年1月を第1期、2021年4月~12月を第2期としており、第2期では第1期で得られた忌避剤の適切な配合割合、散布頻度・時間などの学びが活かされています。
- 1. バッタ忌避剤の改良、作り方・散布方法の普及:
- 南スーダンの農家が身近な素材で作ることができる忌避剤を改良し、作り方・散布方法を研修。材料には現地で防虫効果があることで良く知られているニームの葉や、ニンニク、液体せっけんなど日本でも一般的なものも使われています。
サバクトビバッタの発生を予防し、また発生に対処するためには地域で一体となりって対応する必要があります。REALsは現地農家と一緒に、サバクトビバッタ発生の予兆をまとめ、いち早く気付くための手順を明確にし、すばやく対抗策を取るための通報ネットワークの強化を行いました。このネットワークにはREALsが争い予防の活動で培ってきた「早期発見・早期対応」のメカニズムが活かされており、農民が自身の農地や近隣へのサバクトビバッタ襲来を関係各所に報告・連絡するために活用されます。
また現地での争いの一因として、遊牧民が通過する際に家畜が農地を荒らすことがあります。遊牧民の移動に農民が気付いた際に、このネットワークを通じて情報が共有されることで、農村の指導者と遊牧民が通過ルートを事前に話し合って調整することができるなど、争い予防にも応用されています。
- 3. 農業技術向上研修と種苗や農具の配布で、現地の農家の生産性を上げる:
サバクトビバッタの被害を多少受けても、食料難に陥らずに地域としてのレジリエンス(回復力)を持つことができるように、身の回りで手に入る材料でできる有機肥料づくりや様々な耕作方法の紹介を含む農業技術向上研修を行いました。さらに現地で好まれている野菜などの種苗や農具を支給することで、現地の農家の生産効率を上げる支援も行いました。
2021年12月に終了した第2期事業で、REALsは農家・地域関係者合計542名に研修を行いました。事業終了後に行った農家160名へのモニタリング調査では、100%が研修で学んだ忌避剤を自身の農地で検証し、効き目があったと回答、約94%が害虫対策・管理における連携の重要性と連携手順を理解していることが確認できました。
この活動は、皆さまのご支援とジャパン・プラットフォームの助成を受けて実施しました。