野菜栽培を通じた国内避難民とホストコミュニティ住民との対話と融和の促進事業

認定NPO法人REALs(リアルズ:旧日本紛争予防センター)は争いを予防し、人と人が共存できる社会をつくる国際NGO。ご寄付は寄付金控除の対象になります。

活動レポート

  • 争い予防
  • 南スーダン

野菜栽培を通じた国内避難民とホストコミュニティ住民との対話と融和の促進事業

事業実施の背景

事業地であるグンボ地区は南スーダンの首都ジュバ市近郊にあり、その中にある国内避難民キャンプでは、激しい戦闘によって南スーダン全土から逃れてきた国内避難民およそ3500人が暮らしています。
グンボ地区は、民族の違いによる文化や言葉の違い、また国全体における政治的な対立関係に影響され、国内避難民同士、また国内避難民とホストコミュニティ住民との間でも、トラブルが生じやすい状態にありました。それに加えて、異常気象、食糧価格の高騰、国際的な支援の減少により、ジュバ市の食糧不足が深刻な状況になり、グンボ地区でも食糧をめぐるトラブルが急増していました。
このことは、子供たちにも影響を与えています。学校での暴力を伴う争いが週に3件は発生し、その半数以上が食べ物によるものでした。

事業概要

こうした状況の中REALsは、共同で野菜栽培をすることによって、国内避難民とホストコミュニティ住民の関係を改善する事業を実施しました。
まず、グンボ地区にある小学校にサイエンス・クラブを作りました。クラブは国内避難民とホストコミュニティ住民双方から、子どもとその保護者らおよそ200名が集まって設立されました。このクラブが、事業の中心を担いました。
REALs
は、クラブに農具と農地を用意し、野菜栽培に取り組める環境を整えました。そのうえで、ジュバ大学などの専門機関から講師を呼び、野菜栽培研修を行い、クラブのメンバーが野菜栽培の基礎的な知識を習得できるようにしました。
また、野菜栽培を共同で行う上で起こりうるトラブルを平和的に解決できるように、REALsの専門である紛争管理研修を実施しました。
事業を通じて、共同作業を行うことによる両者の対話と融和を効果的に促進することを目指しました。

この支援は、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成と皆様からのご寄付によって行われています。

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紛争管理研修

REALSは、20164月~8月にかけて、サイエンス・クラブのメンバー延べ392人を対象に、計8回の紛争管理研修を行いました。研修では、異なる民族が共同で野菜栽培を行う上で、言葉や習慣の違いにより生じてしまうトラブルを想定し、それらを平和的に解決するための知識を得てもらいます。そのことで、野菜栽培作業中のコミュニケーションがスムーズに行われ、民族間の融和がさらに促進されるのです。

サイエンス・クラブには小学校4年生から大人まで参加しています。子供を対象にした研修では、大人と同じ内容でも、図を使ったり、演劇による説明を取り入れたりして理解しやすいものとなるよう工夫しました。

例えば、下の写真は、研修の導入の様子です。ファシリテーターが”M”という文字を紙に書き、「この字はなんと書いてありますか?」と尋ねると、その周りにいたある子は数字の3、別の子はアルファベットのWと答え、Eと答える子もいました。これは、見る場所や角度によって見え方が異なることを理解するためのアクティビティです。こうして自分の見ているものだけが正しいわけではないということを、子どもたちに身をもって体験してもらいました。

研修の中では、アクティビティをいくつも取り入れることで、受講者に実体験を通じて、争いがどのように始まって、暴力へと変わっていくかということを深く理解し実践してもらえるようにしました。


この支援は、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成と皆様からのご寄付によって行われています。

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野菜栽培研修

野菜栽培研修は、サイエンス・クラブメンバー延べ337人に対して行われました。ドンボスコ小学校の4年~7年生の子どもたちも参加しました。
子どもたちへの研修の様子をご紹介します。

まず始めに子どもたちは講師から、作物を育てるということがいかに重要であるかということを学びます。そのあとで農具の使い方を教わり、土地を耕すことから始めます。初めに講師が見本を見せて説明した後に、子どもたちが実際に作業を行います。初めはおそるおそる道具を触っていた子どもたちも、だんだんと扱いになれると、順調に作業ができるようになりました。

測量をしっかり行い、写真のように畝を作った後は、野菜の種を植えます。種を植える前にもそれぞれの野菜の栄養価や利用方法を学びました。子どもたちも、実際に種を触り作物について深く学んだことで、野菜栽培に関心が芽生えたようで、集中して講師の話を聞く様子が見られました。

種の植え付け後も適宜研修を行い、8月の事業終了までに、ピーナツや葉物野菜などが収穫できました。ほかにもトマトやナス、タマネギ、オクラなども植えており、収穫間近です。菜園では現在も野菜栽培を続けています。


また、共同作業を通じて、子どもたちが民族を超えて仲良く野菜栽培に取り組む様子も見られました。

この支援は、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成と皆様からのご寄付によって行われています。

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事業の総括

2016年815日に、「野菜栽培を通じた国内避難民とホストコミュニティ住民との対話と融和の促進事業」が終了いたしました。

事業地のグンボ地区には、紛争により国内各地から逃れてきた国内避難民と、元々の居住者であるホストコミュニティ住民が混在しており、様々なトラブルが生じていました。
そうした中、REALsは学校における野菜栽培を通じて国内避難民とホストコミュニティ住民間の融和を図ることを目的に、本事業を実施しました。

本事業では、学校にサイエンス・クラブを設立し、子どもたちに向けて紛争管理研修とその実践の場としての野菜栽培を行いました。その中で子どもたちは平和的共存の重要性を学び、異なる民族の友人とも仲良くするように心がけるようになりました。野菜栽培の現場でも、異なる民族の子どもと道具の貸し借りをしたり、協力して苗を植え付ける作業をしたりと、民族間の積極的な交流が見られました。



事業終了時のモニタリングでは、サイエンス・クラブメンバーの92%において、国内避難民とホストコミュニティ住民間の対話の増加が見られました。また学校での争いの数が3分の1に減少しています。

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子どもたちの中に平和的共存への意識が芽生えたことと合わせて、野菜栽培の現場ですぐに実践をしたことにより、日常での行動の変化につながったと考えられます。実際に、学校の先生からはサイエンス・クラブの子どもたちの行動の変化が多く挙げられています。友人に優しく話しかけるようにする、喧嘩を見つけたらすぐに先生を呼んで喧嘩を止める、民族に関係なく仲良くする、など、子供たちの一人一人が平和的共存に向けた行動をしたことにより、学校全体に好影響を与えています。

この支援は、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成と皆様からのご寄附によって行われました。
ご支援いただきありがとうございました。

次は国内避難民への支援を行います

事業実施期間中の78日から、首都ジュバで政府軍と反政府勢力の間で戦闘が発生し、事業地のグンボ地区にも一時は10,000人以上の国内避難民が押し寄せました。それに伴って学校が閉鎖したことから、サイエンス・クラブの活動内容も臨機応変に変更し、学校の清掃や規模を縮小しての野菜栽培、紛争後の子供たちの心のケアを行いました。より現地に必要な支援を継続的に行うため、野菜栽培をいったん中断し、新規に発生した国内避難民への支援を開始いたします。

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