「育成された平和の担い手が、育成する側に」| 南スーダン
南スーダン・マンガテン地区での平和構築事業から、「平和の担い手育成の連鎖」が確実に広がっている嬉しい報告が届きました。
南スーダンでは現在、約530万人もの人々が保護分野の支援を必要としています。首都ジュバを含む中央エクアトリア州マンガテン地区では、ジェンダーに基づく暴力やギャング暴力が深刻化し、昨年のスーダン危機による帰還民の流入で治安がさらに悪化しています。
2026年12月の国政選挙 を控え、マンガテン国内避難民キャンプでは選挙に関連した暴力のリスクが高まっており、コミュニティ全体で争いや暴力を予防する取り組みが急務となっています。
そんな中、私たちは2年間かけて、コミュニティ住民自身が争いや暴力の予兆を察知し、早期に対応できる体制を整備してきました。

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教わった人が、教える人になる
前回の活動レポートでお伝えした、トレーナー養成ワークショップで育成した35名のコミュニティ・フォーカル・パーソン(地域の平和の担い手)、コミュニティ・リーダー、キャンプ管理員会のメンバーたち。彼らは今、「教える側」として立ち上がりました。
7月の計画会議で入念な準備を行い、8月には28名の地域の平和の担い手たちが、35名の若者と地域のリーダー層に、紛争管理と早期警戒・早期対応の知識を伝える3日間のセッションを実施。そして9月、新たに訓練を受けた24名が実践としてコミュニティパトロールを開始しました。
知識共有セッションで学んだこと
1日目: 紛争を理解し、予兆を見抜く力を
ギャング暴力をテーマにしたロールプレイで、若者がどのようにギャングに巻き込まれていくか、その予兆をどう見抜くかを実演。「ギャング暴力は、経済活動のない若者たちの問題から生まれている」と地域特有の課題を深く議論。
2日目: 対話と調停―平和的解決への道筋
参加者から重要な指摘が。「紛争のほとんどは、無礼な言葉、言語の壁、情報の誤解釈などのコミュニケーション問題に関連している」。この気づきをもとに、非暴力コミュニケーションと調停スキルを実践。さらに、実際にコミュニティで起きているギャング争い、若者の紛争、土地紛争、給水所での争いなどの実践シナリオを用いて、紛争解決の方法を学習。
3日目:早期警戒報告システムの仕組みを学習。「誰に、いつ、どのように報告するか」を明確にし、地域リーダーと外部関係者(警察、人道支援組織等)の連携の重要性を理解。

研修中に現地スタッフから連絡があり、東部アフリカ事業担当の職員・有馬とテレビ電話をつないだ際の様子
参加者の声―自立への確かな歩み
研修を受けた若手リーダーたちは、こう語りました:
「読み書きができない私でも、紛争事例を扱い、他の人を訓練できる知識と経験を得ることができました」
「研修を通じて、自分の強みと弱点を理解でき、自信がつきました」
また、これらの研修を通して、地域のリーダーや研修参加者の中で、“今後はリアルズのスタッフの関与なしに、独立してファシリテーションができるようにするべきだ”という意識が芽生えているとの報告も現地から届きました。
これは、彼らが真に自立した「平和の担い手」として成長した証です。
コミュニティの現実と向き合う
セッションを通じて、参加者たちはコミュニティが直面している現実も率直に語り合いました:
・子どもに関する争い、ゴミ処理、土地問題、給水所でのトラブル
・対応の遅れによる住民の苛立ちと、警察などへの信頼喪失
・ゴミ捨て場の不足による近隣トラブル
参加者たちは「だからこそ、私たちコミュニティ自身が動かなければならない」という決意を新たにし、自発的にパトロール活動に参加することを約束しました。
知識の連鎖が生む未来
・2月: 35名が学んだ
・8月: 内28名が新たな担い手となる35名に教えた
・9月: パトロールが開始され、知識が地域全体へ
教わった人が教える人になり、守られた人が守る人になる。
この知識の連鎖が、事業終了後もコミュニティ自身が継続的に平和を守れる持続可能な体制につながっていきます。
12月の国政選挙を控え、緊張が高まる中、コミュニティ住民自身が平和を守る力を身につけ、次世代へ伝えていく―この取り組みは、今まさに必要とされています。
引き続き皆さまのご支援をお願いいたします。
※この事業は皆様のご支援とジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成で実施されています






