暴力的過激化を予防するための女性及び少女のレジリエンス強化事業

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活動レポート

  • ジェンダー

暴力的過激化を予防するための女性及び少女のレジリエンス強化事業

ケニア沿岸部でテロや暴力を防ぐため女性や少女を支援

REALsは、テロや過激派による暴力の被害が深刻なケニア沿岸部のモンバサ県とクワレ県で女性や少女への心理的・経済的・法的支援を通じ、テロや暴力を煽る過激な思想に抵抗できる力(レジリエンス)を育む事業を、国連機関 UN WOMENと行います。

事業の背景

テロや暴力の影響が広がる世界で、女性が被害者にも加害者にもなる現実

世界各地でテロや暴力が頻発しています。2014年には93か国で32,765人がテロ事件の犠牲となりました。人々を暴力に駆り立てているものは何でしょうか?背景には、社会的不平等や経済的貧困だけでなく、人生における挫折や絶望、孤立等の問題も複雑に絡んでいます。最近は女性や未成年が実行犯として関与する事件も増加しています。実際に、2016年に欧州でテロに関連した容疑で逮捕された1,002人のうち、90%が40歳未満でした。

警察や軍による治安対策の前に、何よりもまず暴力を煽る過激な思想に染まる人々を生み出さないことを目的として、市民やNGOによる早期の介入が世界各国で始まっています。

ケニアでも、テロや過激派による暴力が絶えません。南スーダンやソマリアなど紛争が続く隣国から難民が流入し続け、国内では選挙のたびに民族分断や対立が深まり、経済発展が著しい一方で恩恵に与れない貧困層が不満を抱え、過激な思想に染まってしまうことがあります。ケニアで生きる女性や少女は、暴力の標的になって被害者となることもありますが、生活苦や将来への絶望から過激な思想に染まってテロや暴力を側面支援してしまうこともあります。こうした複雑な現実は、意外と見落とされがちです。

事業概要

心のケアや経済的自立を通じて女性の抵抗力(レジリエンス)を育む事業

8月1日より、REALsはケニア沿岸部のモンバサ県とクワレ県で、1,660人の女性や少女を対象とし、暴力的過激化を予防するための事業を行います。9年におよぶ心のケアの実績と知見を活かして現地カウンセラー60人を育成し、テロや暴力の影響を受けやすい女性や少女、その家族などに質の高い心のケアを提供して、心理面で支援します。

さらに、経済的に困窮している女性とその家族に対して、起業や生計向上を促す支援も行います。経済的に自立することで生活苦や将来の不安が低下することが期待されます。加えて女性や若者が平和と安全保障に果たしうる役割と責任について、法律や政策枠組みを知ることで、一人一人がテロや暴力を煽る過激な思想に抵抗できる力を養います。

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1. カウンセリング基礎研修

モンバサ県とクワレ県の女性計60人が、カウンセリングについての基礎的な技術研修を受けました。この研修は、暴力の影響を受けやすい女性や少女、その家族に対して、質の高い心のケアを提供することを目的としています。カウンセリングを行うために必要な基礎的なスキルや、暴力の影響を受けた人が抱えるPTSD(心的外傷後ストレス障害:強烈なショック体験や強い精神的ストレスが原因で、著しい苦痛や生活機能の障害をもたらすストレス障害)等の課題を扱ううえで必要なスキルを学んだ参加者は、研修後に、自分たちが住む町でカウンセリングを開始しました。

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2. 家族への心のケア

モンバサ県とクワレ県で暴力の影響を受けた人の家族が、自らの家族が抱える課題を共有し合い、家族が果たしうる役割を学ぶフォーラムに参加しました。共有された問題は多岐に渡り、薬物中毒、性暴力、HIV感染、失業、夫婦関係の破綻、授業料が支払えなくて子どもを学校に行かせることができない等の課題が共有されました。暴力の被害を受けた人の心のケアに留まらず、新たな暴力の被害者を生まない方法の一つとして、家族による働きかけが期待されます。
参加者は、課題を共有することを通じ、他の家族がどのように課題に対処しているのかを学び、専門家から、家族が果たしうる役割について助言を受けました。家族内で課題を解決していくだけでなく、個別のカウンセリングや外部機関からの支援が必要な家族もいます。
今後も、それぞれの町に住むカウンセラーが中心となり、きめ細かい家族へのサポートを提供していきます。

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3. 暴力的過激化を予防するための啓発

カウンセラー60名によって、紛争予防における女性の役割や暴力的過激化予防の問題や抵抗力を強化するために女性が果たしうる役割について、啓発が行われました。モンバサ県やクワレ県においては、近年、女性の識字率は上昇傾向にあるものの、法律や政策を理解することはまだ苦労が多いのが実態です。そこで、国際連合安全保障理事会決議第1325号と2242号を簡略化し、現地の言葉であるスワヒリ語に翻訳した資料が作成されました。この資料は、日本でいう単語帳のようになっていて、イラストや図が多用されています。楽しく法律や政策が学べるようになっているのです。

4. 女性や若者への経済的自立支援

女性や若者たちが経済的に自立することにより、暴力的過激化の影響を受けにくくなることを目的としたビジネス研修を行いました。この訓練では、3日間にわたり、グループで事業を行うにあたって必要な、チームマネジメントや資金管理、データの記録や管理など様々なテーマを扱います。

このビジネス研修に参加した女性60名は、ビジネスを行うためのグループ(1グループにつき10人程度)を作り実践的なスキルを学びました。こうして得た知識や、他地域の女性たちの実体験からも学ぶことで、女性たちは小規模ビジネスで自立、さらにはそれを持続していくことを目指しています。

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この事業は皆さまのご支援と、女性の地位向上を目指す国連機関UN WOMENの助成により実施致しました。

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