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ケニア:コミュニティ主導で暴力的過激化を防ぐ
REALs(Reach Alternatives)は首都ナイロビのイースリー地区で、若者の暴力的過激化を防ぐための活動を2018年から続けています。
ケニアではナイロビや沿岸部を中心に、ソマリアを拠点に活動するイスラム系武装勢力アル・シャバーブによるテロ事件が後を絶ちません。イースリー地区は、隣国ソマリアや国境沿いなどから流入する過激派組織の活動の温床と見られており、治安当局による厳しい取り締まりの対象になっている地区です。
そうした環境のもとでいま進めている取り組みの一つが、コミュニティが主体となって暴力的過激化を防ぐためのガイドラインの策定と、その実行のサポートです。
地区全体で取り組む
ガイドラインの策定は、イースリー地区の過激化予防のための地域関係者会議で進めています。
REALsはこの会議を主催し、ケニア事務所職員が進行の手助けをしながら、具体的な解決のための行動と役割分担が実行されるようサポートします。参加メンバーには、地区行政官、地元警察、女性グループの代表、宗教指導者、長老の代表、自治組織などとともに、REALsが活動の中で育成してきたコミュ二ティワーカーとユースリーダーも含まれます。
関係者会議を定期的に行っています
コミュ二ティワーカーとユースリーダーは、イースリー地区の若者の中から育成しています。ユースリーダーは、コミュニティワーカーの中からさらに主体性や実績などの点から選ばれた若者が務めます。過激化は若者が抱える孤立感や絶望感、不安、生活上の問題から始まっていくことが多いため、若者の視点で住民の不安に寄り添い相談対応することで過激化することを防いだり、若者が主体的に過激化予防の啓発活動を推進したりするなどの役割を担っています。
さまざまな立場からの視点を組み合わせて
もともと行政・警察と住民の間に不信感と分断が根深くあったこの地域。REALsは、時間をかけて参加者同士の信頼関係を築いてきました。
ガイドラインの策定に先立って、過激化や争いの予兆にいち早く気付き対応する「早期警戒・早期対応」の手法を研修を通じて移転し、暴力的過激化予防の勧誘手口や手法に関する最新の情報などを伝え、自分たちでできる対策を話し合いました。
それらを踏まえて、「暴力的過激化予防のための住民主導のガイドライン(コミュニティ・イニシアティブ・ガイド)」の策定を進めてきました。ガイドラインは、ケニアの公用語であるスワヒリ語と英語で作成しています。
住民主導で策定したガイドラインの素案がまとまりました
地区に根付く仕組みの一つに
ガイドラインでは、取り組みの推進役となる委員会の設置を定めています。委員会は暴力的過激化予防のための地域活動の実施や、過激化と関係の深い問題であるジェンダーに基づく暴力の発生状況、アルコールやドラッグなどの影響調査を行い、地区の住民、行政、警察への情報提供などを行います。
完成したガイドラインは、イベントや他の過激化予防に関わる組織を通して活用されます。また、ナイロビ市内の他の地区でも活用できるように情報を伝えていきます。
REALs は、昨年策定された「ナイロビ市の暴力的過激化予防のための行動計画」の提案と実施にも携わっており、さらなる住民と行政の橋渡し役としての役割が期待されています。
REALsでは現地の人たちが主体となって取り組んでいる暴力的過激化予防の仕組みづくりを、引き続き後押ししていきます。これからもREALsの活動にご支援をお願いいたします。
ガイドライン概要
【観点1 過激派組織に対する対策】
・宗教的偏見や過激な言説に断固とした対応を示す
・暴力的過激化についての啓発活動の促進
・過激な言説を広めている人物や、拠点となっている宗教施設などの確認・情報共有
など
【観点2 治安分野での対策】
・治安組織と地区住民間の信頼関係を築くための意見交換の場づくり
・治安状況についての地区住民への正しい情報の提供
・犯罪が多く起こっている危険地域の把握
など
【観点3 若年の母親と女の子を過激派組織から守るための対策】
・若い母親や少女から治安面で危険を感じる場面について意見を聞く場を設ける
・暴力的過激化に傾かないよう心理社会的サポートを提供
・ロールモデルとなる当事者から若年の母親や少女たちが話を聞く機会を設ける
・過激派組織に取り込まれた女性たちが受ける性暴力の実態についての情報提供
など
※この活動は、皆様のご寄付を活用するとともに外務省日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。