- 争い予防
- ケニア
争い予防に取り組む若者たちが「持続する組織」として活動を続けられるように(ケニア)
REALsは2022年10月~2023年9月の間、セガサミーグループ様のご支援をいただき、ケニア・ナイロビのスラム地区で争い予防の人材育成事業を行いました。
具体的な活動は以下2つです。
1.ケニア・ナイロビのキアンビウ、マザレ、イースリー地区で活動する3団体(計44人)に、組織として持続的に活動するために必要な能力強化研修を実施
- 2.研修に参加した3団体が、地域の行政や警察、治安関係者と組織として連携する関係づくり
研修に参加し修了証を受け取った若者たち
経済成長が続き観光地としてのイメージも強いケニアですが、2011~22年には平均で1年間に40件のテロが起こり、毎年100人近い人が命を落としています。
特に最貧困層の人々が暮らすスラム地区では、将来に希望を描きづらい苦しい生活を送る若者が多いなか、テロ組織やギャンググループといった暴力を課題解決に用いる組織が、そのような若者に対してたくみな勧誘を行っています。そうした現状に対し、地区住民と行政、警察など地域の治安を守る組織同士の連携は十分に取られておらず、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが密集して暮らすなかで、争いや暴力のリスクが高い状況でした。
そうしたなかでREALsは、キアンビウ、マザレ、イースリー地区で、複数年をかけて若者たちに紛争予防や心のケアの技術を教え、地域の課題解決を行う平和の担い手として育成してきました。技術を身に付けた若者たちは地域に貢献する活動を続けるために、それぞれの地区で団体を設立し自発的に活動を続けています。
セガサミーグループ様にご支援を頂いた今回の活動では、そうした団体が持続的に活動する力を身に付け、行政や警察などの治安関係者と組織として連携する関係性を強化することで、地域に暮らす人々が主体となって争い予防の活動を続け、社会に平和が定着するしくみをつくりました。
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1.組織能力強化研修
キアンビウ、マザレ、イースリー地区で活動する3団体(計44人)に、組織として持続的に活動するために必要な能力強化研修を実施
事業に参加した3団体が組織として持続的に活動していくために不足しているスキル、今後必要なスキルを事前に調査し、以下6つのトピックについてそれぞれ研修を実施しました。
- ①会計研修
- ②事業管理プロセス・モニタリング評価について
- ③紛争予防や心のケアなどの専門領域のブラッシュアップ
- ④リソース(人・物資・資金)の調達について
- ⑤リーダーシップとガバナンス
- ⑥組織運営と戦略
単純な個人の集まりを超えて組織として課題解決を目指すとき、どの研修トピックも欠かせないものですが、スラム地区で活動する団体がこれらを学ぶ機会は限られていました。
そうしたなかで組織の課題への具体的な対応方法を学び、団体や個人としての強みを再確認したことから、参加者個人としても「自らの手で活動を続けていける」という自信になったという声がありました。
団体として必要なリーダーシップについて発表する参加者
研修は事業に参加した3団体合同で行いました。
団体の垣根を超えてグループワークや課題に取り組むなかで、それぞれの経験や知見が共有されただけでなく、一つの大きなチームとして協力する関係性が築かれました。
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2.地域の治安関係者との連携強化
研修に参加した3団体が、地域の行政や警察、治安関係者と組織として連携する関係づくり
地域で争い予防を行っていくうえで、行政や警察、コミュニティ団体などの地域の治安に関係する組織との連携は欠かせません。
今回の事業では2回の連携会合を行いました。それぞれの組織が地域でどんな役割を果たしているかをお互いに共有し、地域が抱える課題について共通認識を作り、課題に対して具体的にどのような連携ができるかアクションプランを作成しました。
マザレ地区の会合にて、グループワークで出た連携案を発表する参加者
連携会合への参加呼び掛け、議題の決定、司会進行などは、REALsではなく事業に参加した3団体が行いました。各団体は今回の事業の研修で関係者とのコミュニケーションについても学んでおり、実際にやりとりをして会合が実現したことが、事業終了後の連携に向けても重要な経験となりました。
キアンビウ地区の会合にて、グループワークで連携案を話し合う
地域に暮らす人々が主体となって争い予防の活動を続け、社会に平和が定着するように
今回の事業はセガサミーグループ様のご支援により実施しました。
同社は世界中の人々がエンタテインメントを楽しむことができる平和で安心な社会の実現を目指してサステナビリティ活動に取り組んでおり、「コミュニティやそこで暮らす人に寄り添い争いを未然に防ぐ」という活動に共感いただき、争い予防の人材育成にご支援をいただきました。
事業の参加者からは、「研修での学びを生かしてコミュニティの平和的な共存へ貢献し続けたい」「今回の事業で他の団体や地域の治安関係者と気軽に連絡を取り合い、頼り合える関係ができた」という声が出ています。
また、今回の事業に参加した3団体から自分たちが得た学びを他の団体や地域の住民に広げる動きもあります。
事業のテーマ「Enhance Community Resilience:コミュニティで困難を乗り越える力を高めよう」を地域のイベントで伝えたり、事業に参加していない団体に学びを共有したり、3団体から地域コミュニティへの波及効果が生まれています。
地域に暮らす人たちが主体となって争い予防の活動を行い、社会に平和を定着させていくために、スラム地区から生まれた3団体が事業で得た力を生かして貢献を続けることが期待されています。